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日本ではクリスマスに、小さなレモンをバスルームに飾り、かぼちゃを食べるらしい。
始めて聞いた時は一体どんな美白効果があるのだろうと思ったが、実際に見て納得した。これはユズというもので、体を暖める効果があるのだという。
そういえば兄の家では、昨今消費エネルギーを抑えているらしい。自分も真似しようと、文字通り知恵を絞ったらこの有り様だ。
「うう…」
「うーん、良い香りだ…ぷぷ」
「あにうえさまのいじわる」
がっくりとコンスタンティンはうなだれて、ピリピリと刺すように痛む自分のデリケートゾーンを見下ろした。コンスタンティンの項からは、スッキリとした柚の良い香りがする。くんくん、すんすん、とローマンは弟の身体に鼻先を近付けていたが、ついに我慢できなくなり、ゲラゲラと笑い転げた。
「そりゃ柚湯を教えてくれたのは良いけど、こんな副作用…教えてよ!」
「だってまさか絞るなんて思わなかったし!」
「だって香りが薄く感じたんだ」
「そりゃただの慣れだ」
「お湯冷めて来てたし」
「長風呂だもんな」
「ユズはあったまるって!」
「嘘じゃねえ」
「…東一恐ろしいサンタを呼んでやる」
ローマンもコンスタンティンも、日本には長くいるが、お互いに顔を合わせる機会は無いに等しい。たまの会食で顔を合わせることこそあるものの、プライベートこそ彼ら宗教家の職場なのだから。
ローマンが東方より早いクリスマスをごく個人的に一緒に過ごそうなどというので、まあ多忙極まる兄に慰みをと思い、勧められるままに浴槽に入り―――今に至る。
「ピリピリする…」
「ほれ、酸いぶどう酒」
「チューハイだろ!」
乱暴に乾杯をして、水と変わらないぶどう酒、もといチューハイを一気飲みする。兄の周りには既に沢山の空き缶。明日のクリスマスミサには抜けてケロッとしているのだから、慣れとは恐ろしい。
「世の中さぁ」
「うん」
「この時期になると自殺が増えるのよ」
「…そだね」
それは事実だった。平素でも、週末は自殺が増える。その理由は。
「寂しいからだそうだ」
兄には似合わない言葉だ。
「仕事や学業から離れた時、自分の周りに誰もいないことを嫌という程見せつけられる。世界中の人間たちが当たり前に持っている絆が、自分にはない。…そう思うんだそうだ」
「まさか兄上様、寂しいから忙しい僕を呼んだの?」
「そうだ」
「よろしい、ならば戦争だ。うぉりゃあ!」
神妙な顔をするローマンに、コンスタンティンが指をくねらせ襲いかかる。彼の弱点は自分と同じだ。脇腹に手を当て、上下に激しく動かす。これまたゲラゲラと笑い転げたローマンに、寂しさなど微塵も感じられない。
「冗談冗談! 逆だ逆! 寂しくならないから呼んだの!」
「神に祈る間をやろう」
笑って酔いが回ったのか、ローマンはぼんやりと半分目を閉じながら、両手を広げた。
「おお主よ! どうぞこの未熟者の羊飼いをお許しください! わたくしはこの一年、考えても考えても寂しくなどなりません。この罪を分かち合い、許しを請う許可を!」
「兄上様、いろんなマンガ知ってるね」
「若い子が教えてくれた」
そうだろう。自分達には無駄な遊びに費やせる時間もお金もない。
「まあ僕も似たようなもんだけど…。つまり今夜の宴は、鎮魂と祈りの宴なわけだね」
「そ。どうせお前も、クリスマスや正月1人ぼっちでも寂しくないだろ?」
「そうだね。確かにそれは僕らが人に寄り添って行かなきゃならない以上、よくない事だ」
「だろ?」
傾けられた発泡酒の缶を鳴らす。侘びしい安酒の音がした。
MerryChristmas
for lonriness
始めて聞いた時は一体どんな美白効果があるのだろうと思ったが、実際に見て納得した。これはユズというもので、体を暖める効果があるのだという。
そういえば兄の家では、昨今消費エネルギーを抑えているらしい。自分も真似しようと、文字通り知恵を絞ったらこの有り様だ。
「うう…」
「うーん、良い香りだ…ぷぷ」
「あにうえさまのいじわる」
がっくりとコンスタンティンはうなだれて、ピリピリと刺すように痛む自分のデリケートゾーンを見下ろした。コンスタンティンの項からは、スッキリとした柚の良い香りがする。くんくん、すんすん、とローマンは弟の身体に鼻先を近付けていたが、ついに我慢できなくなり、ゲラゲラと笑い転げた。
「そりゃ柚湯を教えてくれたのは良いけど、こんな副作用…教えてよ!」
「だってまさか絞るなんて思わなかったし!」
「だって香りが薄く感じたんだ」
「そりゃただの慣れだ」
「お湯冷めて来てたし」
「長風呂だもんな」
「ユズはあったまるって!」
「嘘じゃねえ」
「…東一恐ろしいサンタを呼んでやる」
ローマンもコンスタンティンも、日本には長くいるが、お互いに顔を合わせる機会は無いに等しい。たまの会食で顔を合わせることこそあるものの、プライベートこそ彼ら宗教家の職場なのだから。
ローマンが東方より早いクリスマスをごく個人的に一緒に過ごそうなどというので、まあ多忙極まる兄に慰みをと思い、勧められるままに浴槽に入り―――今に至る。
「ピリピリする…」
「ほれ、酸いぶどう酒」
「チューハイだろ!」
乱暴に乾杯をして、水と変わらないぶどう酒、もといチューハイを一気飲みする。兄の周りには既に沢山の空き缶。明日のクリスマスミサには抜けてケロッとしているのだから、慣れとは恐ろしい。
「世の中さぁ」
「うん」
「この時期になると自殺が増えるのよ」
「…そだね」
それは事実だった。平素でも、週末は自殺が増える。その理由は。
「寂しいからだそうだ」
兄には似合わない言葉だ。
「仕事や学業から離れた時、自分の周りに誰もいないことを嫌という程見せつけられる。世界中の人間たちが当たり前に持っている絆が、自分にはない。…そう思うんだそうだ」
「まさか兄上様、寂しいから忙しい僕を呼んだの?」
「そうだ」
「よろしい、ならば戦争だ。うぉりゃあ!」
神妙な顔をするローマンに、コンスタンティンが指をくねらせ襲いかかる。彼の弱点は自分と同じだ。脇腹に手を当て、上下に激しく動かす。これまたゲラゲラと笑い転げたローマンに、寂しさなど微塵も感じられない。
「冗談冗談! 逆だ逆! 寂しくならないから呼んだの!」
「神に祈る間をやろう」
笑って酔いが回ったのか、ローマンはぼんやりと半分目を閉じながら、両手を広げた。
「おお主よ! どうぞこの未熟者の羊飼いをお許しください! わたくしはこの一年、考えても考えても寂しくなどなりません。この罪を分かち合い、許しを請う許可を!」
「兄上様、いろんなマンガ知ってるね」
「若い子が教えてくれた」
そうだろう。自分達には無駄な遊びに費やせる時間もお金もない。
「まあ僕も似たようなもんだけど…。つまり今夜の宴は、鎮魂と祈りの宴なわけだね」
「そ。どうせお前も、クリスマスや正月1人ぼっちでも寂しくないだろ?」
「そうだね。確かにそれは僕らが人に寄り添って行かなきゃならない以上、よくない事だ」
「だろ?」
傾けられた発泡酒の缶を鳴らす。侘びしい安酒の音がした。
MerryChristmas
for lonriness
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