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いくそす。~2.5次元で萌と賛美を叫ぶ~

聖書二次創作・キリスト教教派擬人化BL専門サークル「いくそす。」のHP。 腐ったクリスチャン略して腐リスチャンが、腐教(布教ではない)の為に日夜東奔西走するだけの簡単な活動をしています。ここでは主に擬人化BLを置きます。 療養のため各地にはかつき(骨林頭足人)が行ってくれてます。本のご感想はゲストブックか、巻末のメッセージのコードからお願いします。

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Merry Christmas for dear

 夜の二度にわたる御降誕(ごこうたん)のミサを終わらせ、俺は信徒ホールに急いだ。いつもアルバで済ませているので、久しぶりに着たキャソックはどこか窮屈だ。

「クリスマスおめでとうございます」

 口々に聞こえる楽しげな信者達の中に、ふと親父の姿を見かけ、俺は驚いて駆け寄る。親父は信者の若い女性達に囲まれ談笑していた。俺が慌てて駆け寄ったので、彼女達は驚いて一歩引いた。どうやら彼が特別な扱いを受ける存在だと気付いたらしい。

「親父! マーティンちに行ってたんじゃないんじゃないのか!?」
「ん? 昼間は行ってたよ。マーティンちはちびっこが沢山だったからな。夕方にパーティが終わって、一足先に俺だけ来たの。お前の式次第ちゃんと見てたぜ」
「そーゆうこと言ってるんじゃ…。待て! 今、『一足先に』って言った?」
「うん」
「ってことは、マーティン、一家で来るのか!?」
「マーティンだけじゃないぞ。お前に好意的な連中は皆来るよ。俺が直談判した」
「…………………」

 ずぅぅぅぅぅぅん…。
 嬉しいのか悲しいのか分からない。しかし俺は確かに打ちひしがれていた。
 まあ、親父の気持ちは嬉しい。クリスマスは復活祭の次の次(※1)に盛り上がる行事だ。そんな日くらい、日ごとの雑務で上手くたちまわれない面子と笑いあいたい。

「コニーは来るのか?」
「コニー? ああ、あいつは今日暇な筈(※2)だからな、もう来るんじゃないか?」
「他に誰が来る? ジャネット…は、来る筈ねえな。メソジストも来ねえか?」
「メソジストはどうだろうね。ただ、バプテストはホーリネスやベリーと一緒に来るって言ってたよ」
「なんだって!? あいつらも来るの!?」
「そ。ベリーは女王陛下とクリスマスを祝ってすぐに来るって言うから、少し遅れるだろうな」
「そうじゃなくって!」

 親父自ら動いたことは相当に効いたらしい。ふだん来ないような面子が(決して仲が悪いわけではない)来ると言うのだから、急いで信者の作ったケーキやスープを取りに行く。些細なことで不機嫌にさせたくはないし、一応俺は長兄だし。弟妹は気遣ってやらなくては。

「兄上様、なにそんなにがっついてんの?」
「うぉっ!」

 一つの更に何枚もケーキを乗せていると、後ろから声をかけられた。振り向くとやっぱり。双子の弟のコンスタンティンだった。

「ほら、うちで売ってるパン持ってきたよ」
「お、おう」
「んで、そのケーキは食べても良いの?」
「お、おう」

 ケーキとパンを交換すると、コンスタンティンは無表情でそれを食べた。自分が作ったわけでもないのに、反応を窺ってしまう。

「ん、美味しい」
「そ、そうか」
「そっちのお稲荷さんも食べたい」
「お、おう、好きなだけ食え。かんぴょう巻きもあるぞ」

 紙皿と割り箸を渡し、辺りを見回してジュースも適当につけてやる。コンスタンティンを物珍しそうに見ている信者の子供が何人かいたので、相手をさせようと此方へ呼び寄せた。

「この人、誰?」
「ワタシの弟」
「兄上様でも、自分の事ワタシなんて言うんだ」
「どこから来たの?」
「矢追ハリストス教会だよ。見たことないかな、玉ねぎみたいな形のお屋根の教会」
「お前も人の事言えねえだろコニー」

 ぼそ、と言い返したが、コンスタンティンは無視した。俺はまだ挨拶をしきっていない。そっとホールを出て、庭へ移動する。何人かの信者が親戚や友人を連れて来ていたが、恐らく彼らは入信しないだろう。
 と、キ、と車が止まった。ミサも終わって、今頃ついているのだ。何となく誰が来たのかは予想がついた。
 しかし迎えに行くと、意外な人物だった。

「め、メソジスト!?」
「…………どうも」

 逞しい身体にスーツを纏い、マーティンの兄弟は少し緊張気味できょろきょろしながら俺に挨拶した。そしてブスッとしたまま差し入れらしい包みを差し出した。

「まあ、お父さんにクリスマスくらい皆で祝おうって言われたから…」
「ああ…嬉しいよ、まあ寒いからホールにどうぞ。ミネストローネがある」
「えと…ありがとう」

 メソジストとは福祉に力を入れている点で共通点があるが、どうも几帳面なメソジストとフリーダムな俺とでは釣り合わないらしく、敵対こそしていないが特に関わってはいなかった。ルーテルの兄弟だから、悪い子ではない。
 ホールに戻ると、俺のいない間に勝手知ったる様子で信者の子供の中に紛れ込んでいる奴がいた。

「あ! お兄ちゃん! メリーメリークリスマス!」

 ぴょん、と飛びついてくるのは、メソジストの妹、ホーリネス。この前、彼女の家のコーヒーブレイクにお邪魔した。

「メリークリスマス、よく来たね。一人?」
「ううん、今トイレに行ってるけど、ペンテコステも連れてきたよ」
「…………へ、へえ、そう」

 なんだ、今年のクリスマスは。ペンテコステまで来たって? なんて奇妙なんだ。またミサで余計なもの(※3)が見えていなければいいが…。

「…あ、ローマン」

 噂をすれば何とやら。ペンテコステがホールに戻ってきた。相変わらず不思議な子だ。

「いい礼拝だったみたいだね。聖霊様が嬉しそうに飛び跳ねてるよ」
「へ、へえ…そう。ありがとう…?」

 こいつの世界観はまだ慣れない。

「ローマン、外に行ってみな。お客人だよ」
「…!」

 残っているのは、バプテストとカンタベリー、ルーテル、カルヴァン、そしてマーティンだ。大急ぎで迎えに行く。みな交流が深い。大急ぎで行くと、何と一度に二人も来ていた。

「メリークリスマス!」
「ルーテル! カルヴァン! よく来たね、メリークリスマス!」
「入祭(にゅうさい)の歌は『久しく待ちにし』だったんですって? 間に合えばよかったのに」
「ボクも都合がつかなくて…」
「いいんだよ。まだ祝賀会の御馳走は残ってるはずだから、食べてって。ツヴィンクリにはミルクでいいんだよね?」
「うん、ありがとう」
「マーティン兄弟はまだ来てないの?」
「ああ…まあ、あいつも忙しいからなあ」

 カンタベリーとマーティンはまだ来ていない。祝賀会の御馳走は最低限ストックしたが、間に合えばいいんだが…。

「…ああ、ローマン兄弟、一人つきましたよ」

 ほら、と、カルヴァンが指差す。タクシーの運転手に手を取られ、車から降りたのは、俺の妹だった。あっと俺とあいつの目線はすぐに勝ちあい、大手に手を振り、カンタベリーが走って来た。

「メリークリスマス! 遅れてごめんなさい兄様。はい、お土産」

 どさ、と渡されたのは、特大の七面鳥。まるまる太った七面鳥はもう冷たいが、十分美味しそうな重さだ。

「どうせ祝賀会だけで満足できない面子がいるでしょう? 後で司祭館で食べればいいわ」
「あはは、俺の冷蔵庫にワインが沢山あるの分かってるな」
「あら、ワインとは大人しいわね。バーボンかと思ったわ」
「お前に合わせてスコッチもあるぜ」
「あら」

 クスクス、とカンタベリーは笑った。そしてふと、会場にある姿がない事に気がつく。

「マーティンは?」
「ああ…」
「…来て、いないの?」
「…………。まあ、あいつは忙しいから」

 来なくても仕方ないよ、と、無理に笑って見せた。
 本当は、一番に来てほしかったのだけれども、あいつもプロテスタントを纏める立場だし、総称というものは時にその存在の意義を狂わせるものだから、我儘は言わない。

「きっと来るわ」
「来ないよ、きっと」

 あいつには、妻も、姑も、子どももいるんだから。
 そう言おうとした時、キキキキキーッ!! と、派手な音がして、自転車が止まった。なんだなんだと信者達がざわつく。
 …まさか? …ああ、そのまさかだ!

「ぜぇー…はぁー…ぜぇー…め、メリー…クリスマス…兄さん」
「…マーティン…どうしたんだよ」
「せ、説得して、て…」
「説得?」

 その時、ひょこ、と、有り得ない人物が顔をのぞかせた。まるでお化け屋敷に入ったかのように、マーティンのズボンにしがみついている。

「ようこそ。来てくれてうれしいよ…。…………ジャネット」

 来たれ友よ 全ての友
 喜び集え ベトレヘムに
 御使いの王なる御子を
 来たれ拝まん 来たれ拝まん
 来たれよ拝まん 我が主を





(※1)カトリックで盛り上げるのは、御復活祭→御こうげん→クリスマスの順。日付けが分からないことからも分かるように、実はクリスマスってあまり位置高くない。
(※2)西方教会と東方教会では、教会暦が違う。その為、クリスマスや復活祭なども日付けがズレている。ちなみに東方教会のクリスマスは一月。
(※3)ペンテコステ派(聖霊派)はテンションが上がると、この世のものじゃない色んなものが見えたり聞こえたりしてしまう。ちなみに宗派としてはカトリックとはそれほど仲は悪くないが、パウラの周りの信者は割と嫌っている人が多い。




 や、確かにジャネットちゃんはクリスマス嫌いだけど。全ての友って書いてあるしいいかなって…(よくねえわ)
 ちなみに作中の料理の名前は本日の祝賀会のメニュー。苺のショートケーキじゃなくて、ローマンくんの仲間の手作りフルーツケーキが出るよ! あとお赤飯もあるよ! だっておめでたい席だもん!
 そりではみなさん御一緒に!

 メリークリスマス!

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